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2024年度 卒業礼拝が行われました

マタイによる福音書5:9 平和を実現する人々は幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。

3月13日(木)に24年度生の卒業礼拝が行われ、本学の元学長である池田美芽先生より、「マタイによる福音書5:9 平和を実現する人々は幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。」という聖書の言葉より「平和を作り出す人に」という題でお話をしていただきました。お話しの概要は以下のとおりです。

1, 平和とは

「平和を作り出す人」は実際にどんな人のことでしょうか。
聖書の語る平和というのは、単に戦争がない、争いがないという状態ではありません。
聖書の「平和」をシャロームと言いますが、それはずいぶん広い意味を含んでいます。

第一に、安心・安全ということです。争いがないということは、安全で、安心した状態でもあります。言い換えれば、明日が来ることを何の疑いもなく、明日は今日と同じように迎えられると信じているわけです。
実際の戦争は、一瞬にして家や、慣れ親しんだ環境、大切なもの、それらが一瞬で奪われる恐ろしいものです。自分に何の非もなくても、いきなりすべてを失う、家族や大切な友をなくす、それを悲しんでいることさえできないのが戦争です。ですから、聖書の「平和」には、単に戦争や争いがないだけでなく、安全であること、安心して生活できることが含まれています。

第二に、健康や長生きという意味もあります。

皆さんはいま、多くの方が、健康的に不安なく動ける、明日もしかしたら動けないかもしれない、という不安を感じることなく生きることができます。健康というのは、本当に賜物です。皆さんが健全な身体を持ち、明日を望めるのは、与えられた健康な身体によることが大きいです。

第三に、富や豊かさという意味があります。

お金だけで安心は買えません。そして私たちは、お金を正しく使うということの難しさも学ぶ必要があります。お金を使う責任と、きちんと働いて社会的責任を得て、その対価として正しい報酬を得る、二つの責任が、社会人としての皆さんにはかかってきます。

第四に、旧約聖書の中では、人々が自然と調和した、心安らかな状態も意味しています。私たちは、環境や自然を敵にしては、穏やかな生活はできません。私たちは、自然に敵対するのでなく、自然を畏れつつ自然と共に生きていることを知る時、私たちを包んでくれる自然の豊かさと共に生きることは喜びとなります。

こうしたことから、聖書の言う平和には、そのもの自体として充実しており、欠けるところがないということを表します。まとめてみると、こういうことではないでしょうか。「それは神が被造世界全体に望んでおられる完全さ・健全さ・安心・安全・調和・幸福・喜びであり、一言で言えば、神が創造された「極めて良い」(創 1:31)世界に他ならない。」

2,神の平和とは

新約聖書で「平和」が語られる時、イエス・キリストの愛によるものです。

イエスが示された「神の平和」とは、自分だけが安楽な暮らしをすることや、力で不満を抑え込んで争いを表面だけなくすことではありません。イエスがされたことは、差別された人、病気の人、自分の身を守るすべのない幼子、生活の苦しい夫に先立たれた女性、そうした人々に寄り添い、慰め、時には癒しの奇跡で、その人たちが、人間らしい生き方ができるようにとされてきました。社会的に弱い立場の人が、差別を受け、人としての尊敬を得られない、さげすまれ、避けられ、人として扱われない時代でした。

人からいじめを受けた方はこの中にもおられると思います。それは、それは人の魂、尊厳、人権を踏みにじられるということです。

私たち保育者の使命は、子どもの命を守り、その心身の健やかな成長を助けることです。そこで無関心と無視と悪意にさらされることは、子どもの一生に大きな傷を残すことになりかねません。

人間にとって真の平和は、人を愛し、人から愛されていることを受け止めることができるような、心豊かな人格形成です。保育者の使命はそこにあります。また、保育者以外の道を選んだ方にとっても重要なことです。他者と共に働くことは、他者の存在を尊敬しなければ信頼関係は成り立ちません。AIが発展し、人間でなければできないことを求められる時代になっています。本当に人間でなければできないこと、それは他者との信頼関係を築くこと、人間としての価値を貴ぶこと、その中から新しいものが生まれてきます。ですから、ここ、大阪キリスト教短期大学で学んだ皆さん方は、その最も大切なことを理解して、ただ知識だけでなく、子どもと共に生きる未来を築く、子どもたちから学び、共に生きる社会を作っていく、尊い使命があります。

私たちが平和を作り出す人になる、それは、私たちが、そうした自分の弱さ、罪といったものを解決されて、真に人間らしい人間として充実した存在とされること、いろんな境遇を受け止めて、その中で自分らしさを発揮し、自分の中で大切にしたいものを大切にし、それを他者の内にも見出し、それを尊重し、他者の人格を尊重し、共に生きることです。

それは幼児教育の場だけではありません。あなた方の家庭、あなた方の友、あなた方のこれからできる人間関係、その至るところで、皆さんは、そうした真の平和を作り、人を生かし、自分も生かす、素晴らしい人として生きることができるでしょう。

皆さんが大阪キリスト教短期大学で学んだことは、何より、そうまとめられるのではないでしょうか。人を愛し、自分を愛する、それはどちらも神によって創造され、愛された人格として尊重されることであり、尊敬を払うことであり、相手を支配するためでなく、相手の徳を建てることです。

これから皆さんの歩まれる道は、決して平坦ではありません。でも、皆さんはその中で、試練に負けず、悪を持って悪に報いるのでなく、喜びをもって他者と共に生きる、相手とともに自分も幸せになる道を見出し、実践する人になってください。それが、「平和を作り出す人」です。

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